こんにちは、タコです。
いきなりですが、実は昔、趣味で小説を書いておりました。その時の作品が出てきましたので、今日は、そのうちの一作品を紹介したいと思います。
この作品は、今はもうなくなってしまった「時空モノガタリ文学賞」という投稿サイトで、入賞した時の作品です。当時は「おでん」というペンネームで書いておりました。
読みやすい短編人あっておりますので、ぜひ、読んでいただければ幸いです。一応はラブストーリー(?)です。
それでは、どうぞ!↓↓↓
タイトル
『バカタレ、ボンクラ、アホンダラ』
バカタレはボンクラのことが好きでした。
でもボンクラはボンクラなので、バカタレに好意を持たれていることなど一切気がつきませんでした。
幸運だったのは、バカタレがバカタレだったことです。ありとあらゆるアプローチをボンクラに流されようとも、自分の想いは彼女に少しずつ、確実に届いていると信じて疑いませんでした。
そんなバカタレを、どうしても放っておけないアホンダラがいました。
アホンダラとバカタレは幼い頃からの親友で、二人は微妙に違いますが、ほぼ似た者同士でした。でもアホンダラはアホンダラなので、なかなか実らないバカタレの恋をもどかしく思っても、助ける術をしりません。そこで、アホンダラは思い切ってボンクラに相談しました。
「バカタレがきみのことを好きみたいなんだ。どうすればいいかな」
ボンクラはこたえました。
「意味がよくわからないわ」
「だから、バカタレがボンクラのことを好きだと言ってるんだ」
「そう。バカタレが私のことを好きなの」
「そうだ」
「ふうん。じゃあ、あなたは誰が好きなの?」
急な質問に、アホンダラは困ってしまいました。そう言われてみれば今の今まで、自分は誰が好きなのかということを考えたことがありませんでした。
家に帰ってから、アホンダラは珍しく真剣に考えました。一つの物事に対してこんなに頭を働かせたのは、バカタレの恋を実らせるにはどうしたらいいかと、一生懸命悩んだ以来かもしれません。
あんまり考え過ぎたので、アホンダラの具合は悪くなっていきました。布団を頭からかぶっても体はがたがたと震え、胃の奥が締めつけられるように冷たく痛みます。家の人たちは、まだ誰も帰ってきません。
アホンダラはだんだんと心細くなっていきました。やがて、誰かそばにいてくれたらと願うようになると、さっきまでぼうっとしていた頭の中に、場所をとって居座るようになった一つの影がありました。それはあのボンクラでした。
アホンダラはふと、自分はボンクラが好きなのではないかと思いました。年中そばにいるバカタレの視線の先は、いつもボンクラでした。そのせいか知らず知らずのうちに、アホンダラもボンクラを意識するようになっていたのです。
そしてついには、今この場所にボンクラがいてくれたらとたまらなくなりました。そこで、彼女の家に電話をかけて、具合が悪いから来てくれないかと頼みました。
ところがボンクラはボンクラなので、
「外見てよ。雪がふってるよ。綺麗だね」
と、てんで彼の話を聞いていないようでした。
アホンダラは素直にカーテンを開けて窓の外を見ました。もう夜であるはずなのに、外は雪の白で明るくありました。そこは、ふだん自分たちが住んでいる場所とはまるで異なる世界のようでした。窓を開けて飛びだせば、まだ見たこともない色々なものと出会えることが、アホンダラにさえ容易に想像できたのです。
けれど、アホンダラは向こうに行きたいとはどうしても思えませんでした。加えて、さっきまでボンクラがいた頭の中のとある場所とは別に、今度はあのバカタレが、胸のあたりでもぞもぞ動きながら居座るようになったのです。彼のことを思って、こんなに悲しい気持ちになったのははじめてでした。
電話を切った後、アホンダラは急いでバカタレに電話をしました。状況を説明すると、バカタレはすぐに飛んできてくれました。彼の手には小さな鍋が握られていて、部屋中にとっても甘い香りがただよいました。
「それはなに?」
アホンダラはバカタレの持つ鍋を指さしました。
「ボンクラにもらったチョコレートを溶かして持ってきたんだ。体がうんとあたたまるよ」
「へえ、きみ、ボンクラにチョコをもらったのか。どうしてだい」
重ねて尋ねると、バカタレは首を傾げました。
「さあ、どうしてだろうね。君の分も彼女からあずかったんだけど、全部この中さ」
鍋のふたを開けると、とろとろに溶けたチョコレートが湯気を立てました。二人は腰をおろして、それをスプーンでかき混ぜながら、一口、二口と、なめていきました。すると、さっきまで冷えきっていたアホンダラの体は嘘みたいに熱くなり、寂しさも悲しさも、雪ふる窓の向こうに飛んでいってしまったような気分になりました。
「さっき、ボンクラと電話で話したんだ」
アホンダラは、チョコをなめながらいつもの調子で言いました。
「へえ、きみ、ボンクラと電話で話したのかい。どうしてだい」
「さあ、どうしてだろうね」
アホンダラはアホンダラですが、家族と同じくらいバカタレのことが好きでした。
外の雪はふりつづけています。
きっと、明日の朝までやむことはないでしょう。
あまった鍋の中のチョコレートは、翌日ボンクラを招いて三人なかよく食べました。
(了)
いかがでしたでしょうか。
今こうして読み返してみると、下手だなあと思う箇所がたくさんありますが、自分で書いていてとても好きな作品でした。
感想などコメントやブクマでいただけると嬉しいです。
その他の記事を貼り付けておきます。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
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